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EXPLORABLE — CROWD DYNAMICS

群集の物理学
個の動きから生まれる、4つの集団現象

出口で生じる Faster-is-Slower、対向流のレーン形成、円周上を逆向きに伝わる Stop-and-Go波、そして密集した群集の自発的な振動。4つの現象を独立したセクションで観察し、個人の動きが集団のパターンへ変わる過程を確かめます。

Section 1

Faster-is-Slower(急ぐほど遅くなる)

出口へ向かう desired speed を上げると、押し合いと身体摩擦によって出口にアーチ状の詰まりが生まれ、崩れるたびに人がまとまって流出します。その結果、急ぐほど全員の避難が遅くなる Faster-is-Slower を確かめます。

観察のポイント:desired speed v₀ を変えて複数回走らせ、避難時間の曲線を比較してください。出口でアーチ状の詰まりが形成・崩壊する様子や、出口手前の柱が圧力を分散する効果にも注目してください。

モデルの中身 — なぜ急ぐほど遅くなるのか

各歩行者 i は次の運動方程式に従います: m dv/dt = m(v₀e − v)/τ + Σ f_ij + Σ f_iw。 相互作用力は f_ij = { A·exp[(r−d)/B] + k·g(r−d) }·n + κ·g(r−d)·Δv_t·t で、心理的な回避(指数項)に加えて、身体が接触したときだけ働く 圧縮反発 k と接線方向の摩擦 κ を含みます(g(x)=max(x,0))。

Faster-is-Slower の正体:急ぐほど遅くなる現象の鍵はこの摩擦項です。 v₀ が大きいと出口で身体が押し合い、摩擦が接線方向の滑りを殺して アーチ状の詰まりが形成・崩壊を繰り返します。画面ではアーチに捕まって 減速した人ほど赤く光ります。 逆説的ですが、出口手前の柱は圧力をアーチの手前で受け止め、流れを安定させることがあります。

数値計算メモ:接触剛性 k=1.2×10⁵ kg/s² は非常に硬いため、 描画とは独立に Δt = 2 ms のサブステップ (semi-implicit Euler)で積分しています。 パラメータは Helbing らの原論文の値をそのまま使用 (m=80 kg, τ=0.5 s, A=2000 N, B=0.08 m, k=1.2×10⁵, κ=2.4×10⁵, 半径 0.25–0.35 m)。

Refs: D. Helbing, I. Farkas & T. Vicsek, Nature 407, 487 (2000).

Section 2

対向流のレーン形成

通行区分も指示もない廊下で、局所的な回避判断から同じ向きに進む人の列が自己組織化する過程を比較します。

観察のポイント:力ベース、視覚ヒューリスティック、ORCA、予見的パワー法則を切り替え、等方性 λ が整列度に与える違いを比べてください。

モデルの中身 — 4つの回避モデルはどう違うのか

力ベース(Helbing & Molnár, 1995):レーン形成には、SECTION 1 で使った 円形の相互作用力では足りません。 円形力では真正面の対向ペアに横方向の力が働かず、群集が膠着します。 ここでは原著(Helbing & Molnár, 1995)の楕円型の予期的回避力を使用: 相手の歩幅 v·Δt だけ先の位置まで含む楕円ポテンシャル V = V₀·exp(−b/σ)(V₀=2.1 m²/s², σ=0.3 m, Δt=2 s)の勾配が、 現在位置と予測位置の二等分方向へ押し返すため、すれ違いが自然に湾曲します。 さらに揺らぎ力 ξ(原論文にも含まれる)が正面デッドロックの対称性を破ります。 知覚の方向依存を表す重み w = λ + (1−λ)(1+cosφ)/2 (Helbing, Farkas & Vicsek, 2000 の異方性因子。φ は進行方向と相手方向のなす角)が この回避力に掛かります。λ真後ろの相手への反応の重みで、 正面では w=1、真後ろでは w=λ。すなわち λ等方性(isotropy)を表し、 異方性 = 1−λ です。λ=1(全方位を均等に知覚=等方)では 後方の無害な相手からも同じ強さで押されて横位置が乱れ、レーンは育ちません。 逆に λ を下げる(=異方性を上げる)ほど「前だけ避け、後ろは無視」という 非対称な回避になり、同方向の人の後ろへ収まる追従が生まれてレーンが仕分けられます。 実測(N=80)では整列度は λ=1 で約0.25、λ=0(前方のみ・既定)で 約0.82まで単調に成長します。λ スライダーを動かすと、 代表者1人の足元に w(φ) の形(λ=0で前方カーディオイド、 λ=1で真円)が扇として現れます。 「整列度」は横断方向バンドごとの進行方向の偏りを 0–1 で示す秩序パラメータです。

視覚ヒューリスティックモデル(Moussaïd, Helbing & Theraulaz, PNAS 2011): 力の重ね合わせをやめ、各歩行者が「方向αへ歩いたら何m先でぶつかるか」f(α) を 視野内(±75°)で見積もり、目的地への到達を最も妨げない方向を選んで 速度 v = min(v₀, f/τ) で歩く、という認知的な意思決定モデルです。 使う情報は各個体の局所的な視覚のみ——規範も通行区分も一切ない 完全にボトムアップな仕組みですが、衝突の「予期」が方向選択に直接入るため、 レーンは約10秒で整列度0.9超まで自己組織化し、ほぼ自由流の速度を保ちます。 力ベース(HM95)ではレーンがメタ安定(整列度0.6前後で合流・分裂を繰り返す)に 留まるのと対照的で、同じ状況・同じ情報でも、個のモデル化の仕方が 集団の秩序の質を決めることを示しています。 なお、この2モデルは密度を上げすぎると対向流ごと凍結します (後述のパワー法則モデルとの重要な対比です)。

RVO / ORCA(van den Berg et al., 2011): 相手との速度障害から許容速度の半平面を作り、回避量を互いに半分ずつ負担します。 全制約を満たす速度のうち希望速度に最も近いものを2次元線形計画で選びます。 希望速度は進行方向のみに設定し、通行側の規範・横方向バイアス・ノイズは与えていません。 ORCAの衝突制約には、他モデルと同じ身体半径 0.25–0.35 m を使用しています。

予見的パワー法則(Karamouzas, Skinner & Guy, PRL 2014): 約30万件の実歩行軌跡ペアの統計力学的解析から導かれた相互作用則です。 歩行者間の「社会的なエネルギー」は距離では書けず、 衝突予測時間 τ——互いに今の速度のまま歩いたら何秒後にぶつかるか——だけの関数 E(τ) = k·τ⁻²·e^(−τ/τ₀)(τ₀ ≈ 3 s)に普遍的に従う、というのが論文の発見で、 ここではその解析勾配 F = −∇E(論文付録 Eq. S2、k=1.5)を 目的地への駆動力・接触バネと組み合わせてそのまま実装しています。 距離ベースの力と違い、衝突コースにある相手にだけ遠くからでも働き、 並走する相手はどれだけ近くても押さない——実データが示す 「正面から来る人は遠くても避け、歩調の揃った人のすぐ後ろは平気」という 非対称性そのものです。この選択性のおかげで高密度でも回避が 「本当に必要なペア」に集中し、他の3モデルが対向流ごと凍結する 密度(ρ ≈ 1.6 人/m²)でもレーンが自己組織化・維持されます。

数値計算メモ:積分は SECTION 1 と同じ Δt = 2 ms のサブステップです。 パワー法則モデルは予見力が滑らかなため加速度の再計算は 10 ms ごと。 τ→0 での発散は、論文が実データで観測した 反応時間による飽和(τ ≲ 0.2 s でエネルギーが頭打ち)に対応して τ ≥ 0.1 s のクランプで、すれ違い接線(判別式→0)の特異性は ペアあたり 25 m/s² の上限で抑え、接触は法線バネ(4×10⁴ N/m)で扱っています。 なお対向流の初期配置(重なりなしランダム挿入)は ρ ≈ 1.6 人/m²(約190人)で 飽和するため、人数スライダーをそれ以上にしても密度は頭打ちになります。

Refs: D. Helbing & P. Molnár, Phys. Rev. E 51, 4282 (1995) / D. Helbing, I. Farkas & T. Vicsek, Nature 407, 487 (2000) / M. Moussaïd, D. Helbing & G. Theraulaz, PNAS 108, 6884 (2011) / J. van den Berg et al., ISRR, 3–19 (2011) / I. Karamouzas, B. Skinner & S. J. Guy, Phys. Rev. Lett. 113, 238701 (2014).

Section 3

Stop-and-Go波

歩行者のルールは全員同じ——「前の人との空きを、自分が約1秒で歩き切る距離に保つ」だけ。前が空いているほど速く歩き、詰まってくるほど歩みを緩めます。ただし人間は目標の速さへ瞬時には切り替えられず、修正は反応の遅れ τ のぶん遅れます。τ が臨界値を超えると、遅れて始まる減速はそのぶん急になり、小さな揺らぎを後ろへ増幅して、先頭もボトルネックもない円周上に、進行方向と逆向きに伝わる渋滞波が自然発生します。

観察のポイント:反応の遅れ τ を臨界値(理論値 0.53 s)の前後で変え、時空図の縞と密度–流量の基本図がどう変わるかを追ってください。歩行者に個体差や速度のばらつきは与えていません——波が出るか消えるかを分けるのは τ だけです。

モデルの中身 — なぜ障害物なしで渋滞が生まれるのか

歩行者のルール:各歩行者が見るのは、すぐ前の人との間隔 h ただひとつです。目標の速さは「前との空きを、自分が T = 1.06 秒でちょうど歩き切る距離に保つ」ように決めます (v = (h − d₀)/Td₀ = 0.36 m は停止時に体が占める長さ)。 つまり保っているのは決まった距離ではなく「時間にして T 秒ぶん」の余裕です (車の運転で「前の車とは2秒空けろ」と教わるのと同じ発想)。 前が空いているほど目標の速さは上がり、詰まるほど下がる——その結果、 みなが同じ速さで流れる定常状態では、速い流れほど広い間隔 h = d₀ + vT を保って歩くことになります。十分すいていれば希望速度 v₀ = 1.2 m/s が上限になり(人はそれ以上速く歩きたがらない)、 密着すれば止まる。まとめると v_des(h) = clamp((h − d₀)/T, 0, v₀) です。 3つのパラメータはすべて歩行者の単列実験の実測基本図(Seyfried et al. 2005)の値です。

反応の遅れ:ただし人間は目標の速さへ瞬時には切り替えられません。 間隔の変化に気づいて歩調を直し終えるまでの時間スケールが τ で、速度は dv/dt = (v_des − v)/τ と遅れて目標を追いかけます (OV = Optimal Velocity モデル、Bando 1995)。規則はこれだけで、 歩行者に個体差はありません——全員が同じ目標速度・同じ τ で歩きます。

なぜ渋滞が生まれるのか:全員が等間隔・等速で回る一様流はこの方程式の 厳密な解なので、渋滞の種は速度のばらつきではありません。誰かがほんのわずかに 遅れたとき、後ろの人は τ 秒遅れてしか反応できないため、 詰まりすぎてから、必要以上に大きく歩みを緩める(ときには立ち止まる)ことになります。 この過剰修正が吸収されて消えるか、次の人へ増幅されながら伝わるか—— 線形安定性解析はその境目を τ_c = T/2 ≈ 0.53 s と与えます。 反応が速ければ(τ = 0.3)どの密度でも流れは一様のまま。反応が遅いと(τ = 0.9) どんな微小な乱れも指数的に成長してストップ・アンド・ゴーの波に育ちます (初期の乱れの大きさは波が育つまでの時間を決めるだけで、原因ではありません)。 時空図に現れる右下がりの縞がその波で、 傾きがジャム波の速度(実測 −0.2 〜 −0.3 m/s、理論値は c = −d₀/T ≈ −0.34 m/s)。 一人ひとりは前へ歩いているのに、波だけが上流へ進みます。 なお、十分すいていて全員が v₀ で歩ける密度では(N を小さくしてみてください) τ を大きくしても波は立ちません——渋滞は距離調整のルールが効いている密度帯だけの現象です。 車の渋滞で有名なこの現象が、歩行者でも同じ数理で起きることを Sugiyama らの円周実験(2008、被験者は車)と Seyfried らの歩行実験が示しました。

Refs: M. Bando et al., Phys. Rev. E 51, 1035 (1995) / A. Seyfried et al., J. Stat. Mech. P10002 (2005) / Y. Sugiyama et al., New J. Phys. 10, 033001 (2008).

Section 4

密集した群集に発生する振動運動

密度が約4人/m²を超えると、数百人規模の群集が外部の合図なしにゆっくりした周期運動へ移ります。単純な往復運動ではなく、一人ひとりの軌跡が時計回り/反時計回りの小さな周回を描きながら同期する、群集全体の自発的な振動です。

観察のポイント:静止・臨界・振動のプリセットを順に試し、人物表示では一人ひとりの周回軌跡を、連続体格子では変位場が広域に同期していく様子を比較してください。

モデルの中身 — 群集はなぜ自発的に回りだすのか

連続体モデル:人物を一人ずつ行動規則で動かすのではなく、密集した群集を連続体として扱います。 群集の変位 u と、身体変形を運動へ変える内部推進力 p∂t u = −ku + p∂t p = −γp p + βγp(1−ηp²/γp)∂t u − (p×∂t u)×p で結びます。最後の非相反的な「風見鶏項」が推進力を速度から横へ逃がすため、 β > βc = 1 + k/γp では速度が推進力を追い続け、時計回りか反時計回りの リミットサイクルが自発的に生まれます。

論文では転移が ρ* = 4.0 ± 0.5 人/m² で観測されました。 「密度に連動」では、この観測点と論文の代表条件(ρ=6で β/βc=1.10)を結ぶ β/βc = 1 + 0.05(ρ−4) を可視化用の現象論的対応として使います。 これは密度からβを導く原論文の構成式ではなく、観測された相転移を操作可能にするための明示的な補間です。 「βを直接操作」に切り替えると、密度と独立に理論そのものを検証できます。

数値計算は著者公開条件と同じ dt=0.001、確率RK4、 γ=1, γp=18, η=0.45, σp=2, k=0.027 を使用します。 論文の単位系(γ=α=1 は単位の定義)は時間の単位を固定しないため、時間軸は、 代表条件 β/βc=1.10 の周期が論文の実測 ω0 = 0.35±0.05 rad/s (閉じ込め長 L≈23 m で周期約18秒)と一致するように校正し、 論文が測定した ω0 ∝ 1/L に従って L とともに再スケールします。 この校正は表示上の時間単位の選択であり、力学そのものは変えません。 原論文の平均場は空間一様です。 画面は局所平均場と接触ネットワークを組み合わせた可視化拡張です。 個人差のある微小な重心移動は常に独立に残し、非接触時には平均場の揺れを人物へ直接伝えません。 接触距離内の人物から連結成分を毎時刻つくり、小集団では4近傍を双線形補間した局所平均場へ部分的に追従します。 最大連結成分が群集の約10〜40%へ広がるにつれて追従率を滑らかに増幅し、広域のうねりへ移行します。 この接触伝播と人物の非貫通制約は表示上の拡張であり、原論文の空間一様な平均場そのものではありません。

Refs: F. Gu et al., Nature 638, 112–119 (2025), doi:10.1038/s41586-024-08514-6.

Section 5 — 実験中

交差流のストライプ形成

SECTION 2 の対向流(180°)を任意の交差角に一般化した実験セクションです。90° や 60° で交わる2つの流れは、一人ひとりが衝突を避けるだけで、2つの進行方向の中間(二等分方向)に沿った斜めの縞へ自己組織化します——通行区分も信号もありません。回避則は SECTION 2 と同じ4つのモデルから選べ(既定は高密度に最も強い予見的パワー法則)、舞台は壁のない周期領域(端から出ると反対側から現れる)です。

観察のポイント:まず 90° で縞ができるのを待ち、次に 60°・45° へ変えて縞の向きが2つの流れの二等分方向を追いかけることを確かめてください。角度が浅いほど流れの相対速度が小さくなり、縞の成長は遅く弱くなります。180° では SECTION 2 と同じ対向流レーンに戻ります。HUD の「分離度」が縞の成長の秩序パラメータです。

モデルの中身 — なぜ交差する流れは斜めの縞をつくるのか

設定:一辺 16 m の周期領域(トーラス)に2つの流れを半数ずつ配置します。 琥珀色は +x 方向へ、水色は交差角 θ の方向へ、希望速度 v₀ で歩こうとします。 回避則は SECTION 2 と同じ4モデル——視覚ヒューリスティック(Moussaïd 2011)、 力ベース HM95(λ=0 固定)、ORCA、予見的パワー法則(Karamouzas 2014、既定)——を、 それぞれ希望方向を任意ベクトルに、境界を壁なしの全周期に一般化して切り替えられます。 壁の影響を消して「流れ同士の相互作用」だけを取り出すための理想化です。 モデルによって縞の鮮明さ・立ち上がりの速さ・高密度での凍結のしやすさが 異なるので、同じ角度で見比べてみてください。

なぜ縞になるのか:相手の流れと何度もすれ違うのはコストが高いので、 群集は「相手の流れとの遭遇が最も少なくなる並び方」へ自己組織化します。 それは2つの流れの相対速度 v₁−v₂ に垂直な帯に分かれる配置です。 等速なら相対速度は二等分方向と直交するため、縞は二等分方向に平行になります ——90° 交差なら 45° の斜め縞です。縞の中では同じ向きの人だけが流れ、 縞と縞が互いをすり抜けます。対向流(θ=180°)ではこの縞がそのまま 進行方向に平行なレーンになる、という意味で SECTION 2 の一般化になっています。 交差流の斜め縞は Ando らの駅構内観察や Helbing らのシミュレーションで 古くから知られ、Cividini らが格子モデルで理論的に解析しました。

分離度:各歩行者の半径 1.5 m 内の隣人に占める「同じ流れの仲間」の割合を 全員で平均し、よく混ざった状態(0.5)が 0、完全な分離(1.0)が 1 になるよう 再スケールした秩序パラメータです。縞が育つと 0.5〜0.8 程度まで上がります。

Refs: I. Karamouzas, B. Skinner & S. J. Guy, Phys. Rev. Lett. 113, 238701 (2014) / J. Cividini, C. Appert-Rolland & H. J. Hilhorst, EPL 102, 20002 (2013) / D. Helbing, P. Molnár, I. J. Farkas & K. Bolay, Environ. Plann. B 28, 361 (2001).

EXPLORABLE — CROWD DYNAMICS

群集の物理学
急ぐほど遅くなり、流れは勝手に整列する

一人ひとりの単純なルールから、集団にしか存在しない物理が立ち上がります。 SECTION 1 では「目的地へ向かう力」と「押し合う力」だけの Social Force Model(Helbing, Farkas & Vicsek, 2000)から、 避難とすれ違いに創発する2つの反直感的な現象を。 SECTION 2 では、先頭も障害物もないのに渋滞が自然発生する 群集の波(ストップ・アンド・ゴー)を最適速度モデルで実験します。 パラメータを自分の手で動かして確かめてください。

Section 1

避難とすれ違い — Social Force Model

急ぐほど遅くなる避難と、誰も指示しないレーン形成

DRAG 視点回転 ・ WHEEL ズーム

実験Ⅰ の設定

あなたの実験記録:desired speed v₀ と 全員避難時間

● 柱なし○ 柱あり

避難が完了するたびに点が1つ増えます。「リピート ON」なら同じ条件を自動で繰り返します。v₀ を変えて何度か走らせると、 N=200ではおよそ 1.5 m/s を境に「急ぐほど遅くなる」曲線が浮かび上がります (初期配置が毎回ランダムなので、ばらつきも本物です)。 点の色は人数Nを表します。Nを変えて走らせ、色ごとの曲線を比べてみてください—— 人数を減らすと最適速度は高速側へずれ、N=50ではほぼ「速いほど良い」に戻るはずです。 出口の行列が支配的か、出口までの移動が支配的かの綱引きです。 出口幅を変えると条件が変わるため記録はリセットされます。

Section 2

群集の波 — 1次元渋滞から巨大群集のカイラル振動へ

反応の遅れが生むジャムと、密度が生む群集全体の自発的な旋回

先頭もボトルネックも事故もない円周上を、ただ「前との間隔を保ちながら歩く」だけで、 渋滞の波が自然発生します——名古屋大グループの有名な円周実験(Sugiyama et al. 2008)です。 鍵は一人ひとりの反応の遅れ τ。臨界値を超えると一様な流れは不安定になり、 ジャム波が上流へ伝播します。 ここでは実測の基本図に基づく最適速度(OV)モデル (Bando 1995 / Seyfried 2005)を動かし、Nature誌で報告された高密度群集の 集団カイラル振動(Gu et al. 2025)へ進みます。これは一方向流の ストップ・アンド・ゴーとは別の現象です。約4人/m²を越えた閉鎖空間で、数百人が 外部の合図なしに時計回り・反時計回りの円軌道を自発的に選ぶ相転移を実験します。

DRAG 視点回転 ・ WHEEL ズーム

実験Ⅳ の設定

時空図(θ-t)— 波を「見る」

あなたの実験記録:基本図(密度 ρ と流量 q)

τ小 → τ大

1回の計測は120秒(後半60秒の平均速度から q = ρ·⟨v⟩ を算出)。完走するたびに点が1つ増えます。 τ = 0.3 で N を 12→60 と振って1本目の曲線を、次に τ = 0.9 で2本目を描いてみてください。 流量が最大になる中密度域で、反応の遅いほうの曲線が下がります(容量低下 約13%)。 渋滞は「流せる上限」を下げるのです。1回ごとの初期配置は乱数なので、点のばらつきも本物です。